ChatGPTは、なぜ私のことを分かっているのか。

「AIに何をつくらせるか」の前に考えたいこと

先日、ChatGPTの「パーソナライズ」の設定画面を、あらためて確認していました。

AIを仕事で活用するとき、「自分のことをAIにどう伝えるか」は、CREDISTA™ でも継続して取り組んでいるテーマのひとつです。

ところが、自分のChatGPTの設定を確認してみると、パーソナライズの欄には特別なことがほとんど書かれていませんでした。普段から継続的に使っていたこともあり、あらためて設定することを忘れていたのです。

それでも、普段使っているChatGPTは、私がどんな仕事をしているのかだけでなく、仕事で大切にしていること、以前決めた方針、文章を書くときに避けたい表現なども、かなり踏まえて応答します。

設定欄にはほとんど書いていないのに、なぜここまで対話が変わってきたのか。

この違いを考えていくと、単なる「ChatGPTの設定方法」ではない、AIとの付き合い方についての大切な問いが見えてきました。

「自分専用のプロンプト」をつくれば十分なのか

最近は、「自分専用のプロンプトをつくる」「ChatGPTを自分好みに設定する」といった使い方も広がっています。

これは、とても便利です。

たとえば、

「私はこんな仕事をしています」

「難しい言葉は使わないでください」

「文章はこのくらいの長さにしてください」

といったことをあらかじめ伝えておけば、毎回同じ説明をする必要がありません。

ただ、AIを仕事で継続的に使ってきた経験から見ると、それだけでは説明できないことがあります。

私自身、ChatGPTとの対話を続けるなかで、

「それは以前決めた方針と違う」

「その表現は自分らしくない」

「そこはAIではなく、人が判断したい」

「これは今後も大切にしたい」

といったやり取りを何度も繰り返してきました。

AIが出した答えを、そのまま受け入れてきたわけではありません。

違うと思えば修正し、迷えば対話し、何を残すのかを決める。

そうしたやり取りを積み重ねてきました。

すると、AIとの対話も少しずつ変わってきます。

単に私の職業や文章の好みを知っているだけではなく、

「この人は、こういうときに何を大切にするのか」

まで踏まえて応答しているように感じる場面が増えてきました。

AIに伝えるのは、プロフィールだけでいいのだろうか

では、仕事でAIを使うためには、実際に何をAIへ伝えておく必要があるのでしょう。

名前や職業。

経歴。

専門分野。

好きな文章の雰囲気。

もちろん、こうした情報も役に立ちます。

でも、仕事を手伝ってもらうのであれば、それだけでは十分ではないと考えています。

何を大切にして仕事をしているのか。

お客様と向き合うときに、何を優先するのか。

どんな仕事なら引き受け、どんな仕事なら引き受けないのか。

迷ったときに、何を基準に決めるのか。

これまでの成功や失敗から、何を学んできたのか。

こうしたことも、その人や会社を理解するための大切な情報だからです。

CREDISTA™ では、その人や企業にしかない経験、価値観、専門性、仕事をする理由、お客様への思いなどを「原本(SOURCE)」と捉えています。

AIに仕事を手伝ってもらう時代になるほど、このSOURCEが大切になる。

現在、私たちはその可能性を実際のAI活用を通して検証しています。

「AIが私を知っている」ことと、「私がそれを持っている」ことは違う

ここから、もうひとつ重要な問いにつながります。

今使っているChatGPTが、長い対話を通じて私の仕事や考え方を踏まえて応答してくれる。

これは、とても便利です。

では、明日まったく別のAIを使ったらどうなるでしょう。

これからはChatGPTだけでなく、さまざまなAIを、仕事や目的によって使い分けることが増えていくでしょう。

そのたびに、

「私はこういう人間です」

「私の会社はこう考えています」

と、ゼロから説明し直すのでしょうか。

ここには、大きな違いがあります。

「AIが私を知っている」ことと、
「AIに伝えるべき自分のことを、私自身が持っている」ことは違う。

特定のAIの中だけに、自分や会社についての理解が蓄積されていく。

それは便利です。

でも、それだけに頼るのではなく、AIに伝えるべき自分たちの大切なものを、自分たち自身でも持っておく必要があるのではないか。

CREDISTA™ では、ここを重要なテーマとして考えています。

AIが変わっても、自分たちの大切なものは残る

AIのサービスや機能は、これからも変わっていくでしょう。

今日使っているAIが、数年後も同じ形で使われているとは限りません。

新しいAIも登場します。

仕事によって複数のAIを使い分けることも、珍しくなくなるでしょう。

でも、

自分が何を大切にしているのか。

なぜこの仕事をしているのか。

誰に、何を届けたいのか。

お客様とどう向き合いたいのか。

何を基準に判断するのか。

そうしたものまで、AIが変わるたびに変わるわけではありません。

だからこそ、

「どのAIを使うか」の前に、
「AIに何を渡すのか」を自分たちが持っていること。

これが、これからますます重要になると考えています。

自分たちの経験。

専門性。

仕事への思い。

判断するときに大切にしていること。

そうしたものを特定のAIだけに預けるのではなく、自分たちの側にも残しておく。

そして必要なときに、必要なAIや仕事へ活かしていく。

そうすれば、使うAIが変わっても、自分たちの原点から始めることができます。

「AIに何をつくらせるか」の前に

AIの話になると、どうしても、

「何を書かせるか」

「どんなプロンプトを使うか」

「どのAIが一番性能がいいか」

という話になりがちです。

もちろん、それらも大切です。

でもCREDISTA™ では、そのひとつ前にある問いを大切にしています。

AIに何をつくらせるかではなく、AIに何を渡すか。

そして、その「渡すもの」は、誰かがつくった便利なプロンプトの中だけにあるものではありません。

自分自身や、自分たちの会社がこれまで積み重ねてきた経験や専門性、仕事への思い、判断の積み重ね。

その中にこそ、AIに渡すべき大切なものがあるのではないでしょうか。

CREDISTA™ では今、このテーマを実際にAIを使いながら確かめています。

私自身とChatGPTとの長期的な対話も、そのひとつです。

AIは、継続的な対話のなかで、人や企業のことをどこまで理解できるのか。

その理解には、どのような情報が必要なのか。

そして、それを特定のAIの中だけに置くのではなく、どうすれば人や企業の側にも残し、これからの仕事に活かしていけるのか。

こうした実践は、今も続いています。

だからこそ、自分たち自身でも実際に使い、確かめながら考え続けています。

AIがますます仕事の中に入ってくるこれから。

どのAIを使うかを考える前に、
自分たちはAIに何を渡したいのか。

一度、自分自身や自分たちの会社について考えてみることも、これからのAI活用の大切な準備になるのではないでしょうか。

前田浩一

AI時代の「対話デザイン」専門家 / CREDISTA™ コーチング 代表
人にもAIにも選ばれる「クレド経営」を伴走します。

ITベンチャー企業や外資系企業でテクノロジーの最前線に触れた後、ブランディング、広報、コミュニケーションデザインの領域で独立。

2010年代には、福祉分野の指導者を育成するオンライン資格講座をプロデュースし、全国2,000名以上の資格取得者の育成に携わりました。

現在は、教育・医療・福祉分野を中心に、経営者や専門職の「自分軸」を言葉にするコーチングと、その想いや専門性をWeb・AIを通じて届ける仕組みづくりを支援しています。

若い頃には、NHK放送『大草原の小さな家』のウイリー役など、声優として活動した経験があります。「言葉は、内容だけでなく、声や伝え方によって人の心に届く」という実感は、現在の対話支援にもつながる原点の一つです。

NLP(神経言語プログラミング)をはじめとする心理・コミュニケーションメソッドを学び、米国NLP協会認定マスタープラクティショナー等の資格を取得。

経営者の内側にある原本からCOREを見つけ、判断軸とクレドを整え、人にもAIにも正しく伝わり、信頼される経営基盤をデザインしています。

研修講師実績

・六本木ヒルズにおけるブランディング研修
・厚生労働省「全国高等学校就職ガイダンス」メイン講師
・大学・専門学校・高校におけるキャリア支援、EQ自己分析・面接技法研修
・福祉・介護・保育従事者向けコミュニケーション/ストレスマネジメント研修
・発達特性と家族関係をテーマとした講演
・ローコード・ノーコードによるWeb制作研修
・AI×Web戦略研修

アドバイザー実績

医療機関、福祉事業者、教育関連団体などのWeb・情報発信支援に加え、地方自治体や金融機関等にデジタル地域通貨のSaaSプラットフォームを提供する企業のプロジェクトに参画。自治体実証実験アプリのUI設計・ロゴ開発などを担当。